岡山県は2026年10月15日、県内の保育施設などで2025年度に職員による虐待が3件あったと公表しました。2025年10月1日に改正児童福祉法などが施行され、保育所や認定こども園、幼稚園の職員による虐待にも通報義務と都道府県による公表制度ができてから、初めての公表です(岡山県 指導監査課・岡山県 総務学事課)。
報道では「5歳児の描いた絵を『汚い』と言った」という心理的虐待が大きく取り上げられましたが、県の資料には残る2件の中身や、通報が何件あって何件が虐待と認められたのかも載っています。この記事では県の公表資料2本を読み解き、同じ日に公表された障害者・高齢者施設、先に公表した鳥取県、国の全国調査とくらべて、岡山の数字がどういう位置にあるのかを整理しました。保護者が「おかしい」と感じたときの通報先もまとめています。
ちばけるこの記事は2026年10月17日時点の情報です。県の公表方針にあわせて、施設名や職員の名前は書いていません。
- 岡山県が認めた虐待は3件・子ども5人。施設は幼保連携型認定こども園・認可外保育施設・私立幼稚園型認定こども園が1件ずつ
- 保育施設など(児童福祉法分)は通報14件のうち虐待と認定されたのは2件(14.3%)
- 対象期間は施行後の半年だけ(2025年10月〜2026年3月)。年に直すと通報は約28件ペースで、高齢者施設(42件)に近い規模
- 保育所等を利用する子ども1万人あたりの認定は岡山0.66件・鳥取1.35件。件数が少なく、差を論じられる段階ではありません
- 改正法のポイント(誰に通報義務があるか・通報した職員は守られるか・何が公表されるか)
- 保護者が通報・相談する先(市町村・県・緊急時は110番)
岡山県が公表した保育施設の虐待3件の中身
県の公表は、法律ごとに2本の資料に分かれています。保育所・認定こども園(幼保連携型)・認可外保育施設などは児童福祉法と認定こども園法に基づいて指導監査課が、幼稚園と幼稚園型認定こども園は学校教育法に基づいて総務学事課が担当しています。2本をあわせて1つの表にしました。
| 施設の種類 | 虐待の類型 | 子ども | 行った職員 | 県・市町村の措置 |
|---|---|---|---|---|
| 幼保連携型認定こども園 | 放棄・放置(ネグレクト) | 3歳児(男子)1人 | 保育教諭1人 | 改善勧告(園全体の保育の在り方・組織管理体制の見直し、研修の強化など) |
| 認可外保育施設 | 身体的虐待・心理的虐待 | 1歳・2歳・4歳の3人(男子2・女子1) | 保育士2人 | 文書指導 |
| 私立幼稚園型認定こども園 | 心理的虐待 | 5歳児(女子)1人 | 保育教諭1人 | 助言(園の再発防止策を確認したうえで、学校運営の改善に努めるよう求めた) |
※認可外保育施設の子どもの年齢・性別は、指導監査課の資料の合計(男子3・女子1、1〜4歳が各1人)から、改善勧告として内訳が示された幼保連携型の1人(3歳男子)を差し引いて求めました(指導監査課 公表資料PDF・総務学事課 公表資料PDF)。
- 3件で被害を受けた子どもは5人、虐待をした職員は4人。類型は心理的虐待2件、身体的虐待1件、放棄・放置1件(重複あり)で、性的虐待は0件でした
- いちばん重い措置は幼保連携型認定こども園への改善勧告。改善命令や事業停止命令、認可の取り消しまで進んだものはありません
- 幼稚園型認定こども園では、県の資料によると、園が不適切な保育だったと認め、全教室へのカメラ設置、職員のセルフチェックリスト導入、職員研修といった再発防止策をとっています
「絵が汚い」はなぜ虐待になるのか
報道によると、この保育教諭は5歳の女の子の描いた絵に「汚い色ね」と言い、「泣いたから教室の空気が汚れた」とも発言しました。様子を不審に思った保護者が子どもにICレコーダーを持たせたことで発覚し、時期は2025年12月とされています(KSB瀬戸内海放送・OHK岡山放送)。
こども家庭庁と文部科学省のガイドラインは、心理的虐待の例として「こどもの自尊心を傷つけるような言動」「こどもの大切にしているものを乱暴に扱う」「こどもの心を傷つけることを繰り返し言う」などを挙げています(保育所や幼稚園等における虐待の防止及び発生時の対応等に関するガイドライン)。たたいたり閉じ込めたりしなくても、言葉だけで虐待と認められることがあるという点は、保護者として知っておきたいところです。
通報14件のうち虐待と認められたのは2件
指導監査課の資料には、法律ごとに「通報・届出件数」と「虐待認定件数」が並んでいます。同じ日に公表された障害者・高齢者の施設とくらべると、次のとおりです(岡山県 令和7年度における施設従事者等による虐待の状況)。
| 施設 | 通報・届出 | 虐待と認定 | 認定の割合 |
|---|---|---|---|
| 障害者福祉施設 | 94件 | 14件 | 14.9% |
| 高齢者福祉施設 | 42件 | 17件 | 40.5% |
| 社会的養護関係施設 | 4件 | 1件 | 25.0% |
| 保育施設など(児童福祉法分) | 14件 | 2件 | 14.3% |
- 保育施設など(児童福祉法分)は通報14件のうち2件(14.3%)が虐待と認められました。障害者施設(14.9%)とほぼ同じ割合です
- ただし保育施設は、制度が始まった2025年10月からの半年分です。単純に2倍すると年28件ほどの通報になり、高齢者施設の42件に近い規模です
- 幼稚園等(学校教育法分)は県資料に通報件数の記載がなく、認定1件だけが示されています。朝日新聞は保育施設などへの通報・届出を計15件と報じています(朝日新聞 10月15日)
- 「認定されなかった」通報は、事実確認の結果、虐待にはあたらないと判断されたものなどです。認定されなかったからといって、通報が無駄だったわけではありません
鳥取県や全国とくらべると|件数はまだ少なく、比べにくい
同じ制度に基づく公表は、鳥取県が2026年6月10日に先に出しています(鳥取県 令和7年度教育・保育施設等における虐待事案について)。保育所等を利用する子どもの数(2025年4月1日、こども家庭庁調べ)で割ってくらべました(岡山県 統計資料 F-69)。
| 岡山県 | 鳥取県 | |
|---|---|---|
| 通報 | 15件(報道) | 4件 |
| 虐待と認定 | 3件 | 2件 |
| 認定された類型 | 身体的・心理的・放棄放置 | 身体的虐待のみ |
| 施設 | 幼保連携型・認可外・幼稚園型 | 認定こども園2件 |
| 保育所等の利用児童 | 45,145人 | 14,811人 |
| 利用児童1万人あたりの認定 | 0.66件 | 1.35件 |
| 利用児童1万人あたりの通報 | 3.32件 | 2.7件 |
- 1万人あたりの認定は岡山0.66件、鳥取1.35件で、通報は岡山のほうが多めです。ただどちらも数件の世界なので、1件増えるだけで順位が入れ替わります。岡山が多い・少ないと言える数字ではありません
- 鳥取は通報4件のうち1件の事実確認が2026年度にずれこんでいます。半年の締め切りに確認が間に合わないケースがあることも、件数を見るときの注意点です
- 利用児童数には認可外保育施設や幼稚園(2号・3号認定以外)の子どもは入っていないので、あくまで目安です
国の全国調査では「事実確認2,457件→虐待132件」
法律で公表が義務になる前、国は2022年4〜12月の9か月分を全国の自治体に聞いています(こども家庭庁・文部科学省 実態調査 自治体等調査の結果)。保育所・認定こども園・認可外など7種類の施設を合計すると、次のようになりました。
| 施設 | 自治体が事実確認 | 不適切な保育と確認 | うち虐待 |
|---|---|---|---|
| 保育所 | 1,553件 | 931件 | 97件 |
| 地域型保育事業 | 159件 | 63件 | 3件 |
| 認可外保育施設 | 216件 | 131件 | 14件 |
| 幼保連携型認定こども園 | 392件 | 187件 | 16件 |
| 幼稚園型認定こども園 | 45件 | 16件 | 1件 |
| 保育所型認定こども園 | 90件 | 32件 | 1件 |
| 地方裁量型認定こども園 | 2件 | 1件 | 0件 |
| 合計 | 2,457件 | 1,361件 | 132件 |
- 自治体が事実確認をした2,457件のうち、虐待と確認されたのは132件(5.4%)でした。このときは「不適切な保育」という広い枠で調べていて、虐待はその一部という扱いです
- 保育所(全国22,720施設)に限ると、市町村が事実確認1,492件→不適切な保育914件→虐待90件です(同調査の概要)
- 2025年8月に改訂されたガイドラインは「不適切な保育」という言葉を使うのをやめ、身体的・性的・ネグレクト・心理的の4つの「虐待」を軸に整理し直しました。そのため、2022年の調査と今回の公表の件数はそのままくらべられません
- 岡山県の保育所等は566施設(2025年4月)。そのうち半年で虐待が認められたのは3施設でした
保育所の虐待に通報義務|改正児童福祉法で何が変わった?
きっかけは、2022年に静岡県裾野市の保育所などで虐待事案が相次いだことです。改正法(児童福祉法等の一部を改正する法律、令和7年法律第29号)は2025年4月18日に成立し、10月1日に施行されました。もともと児童養護施設や障害者施設・高齢者施設にあった仕組みを、保育所などにも広げたものです(こども家庭庁 保育所等の職員による虐待に関する通報義務等について)。
| 項目 | 中身 | 根拠 |
|---|---|---|
| 虐待の定義 | 身体的虐待・性的虐待・ネグレクト・心理的虐待の4つ | 児童福祉法33条の10 |
| 通報義務 | 虐待を受けたと思われる子どもを見つけた人は、速やかに都道府県か市町村に知らせなければならない(職員だけでなく、保護者など誰でも) | 33条の12第1項 |
| 通報した職員の保護 | 通報を理由に解雇などの不利益な扱いを受けない。守秘義務の規定も通報の妨げにならない(うその通報・過失によるものを除く) | 33条の12 |
| 事実確認と措置 | 所管の県・市町村が事実を確認し、報告徴収・改善勧告・改善命令・事業停止命令などをとる | 33条の14ほか |
| 公表 | 都道府県が毎年度、県と市町村の分をまとめてウェブサイトで公表する(政令市・中核市の分も含む) | 33条の16 |
- 対象は保育所、幼保連携型認定こども園、幼稚園、認可外保育施設、小規模保育、一時預かり、病児保育、放課後児童クラブ、児童館など。幼稚園と幼保連携型認定こども園は、学校教育法と認定こども園法の改正で同じ仕組みになりました
- 法律の条文では「通告」、国のガイドラインや県の資料では「通報」という言葉が使われています(児童福祉法 e-Gov法令検索)
- 公表されるのは、子どもの性別・年齢、虐待の類型、施設の種別、職員の職種、とった措置などです。施設名は公表事項に入っていません
- ガイドラインは、この公表を「施設名等を公表して施設等に対し制裁を与えるとの趣旨ではない」としています。個別の事案を別に公表することは妨げないともしています
保育園の虐待を疑ったら|岡山での通報・相談先
国のガイドラインでは、通報は都道府県・市町村のどちらに入れてもよく、受けた側が担当でなければ担当の自治体に引き継ぐことになっています。迷ったら、まず施設のある市町村に連絡してください。
| こんなとき | 連絡先 |
|---|---|
| 子どもが今まさに危ない(けが・暴行の最中など) | 110番(警察) |
| 保育所・認定こども園・小規模保育など | 施設のある市町村の保育担当課。岡山市なら保育・幼児教育課(086-803-1228、保育施設の管理・運営の担当) |
| 認可外保育施設 | 岡山県(岡山市・倉敷市内の施設は各市が所管) |
| 私立幼稚園・私立幼稚園型認定こども園 | 岡山県 総務学事課(今回の公表の担当、086-226-7198) |
| 家庭での虐待が心配 | 児童相談所虐待対応ダイヤル189 |
- 岡山市の電話番号は岡山市のよくある質問に載っている保育施設の管理・運営の担当課です。岡山市役所は2026年11月24日に新庁舎が全面開庁するので、訪ねる場合は場所を確認してください
- 伝える内容の例:いつ・どこで・誰が・何をしたか、子どもの様子(けが・言動の変化)、録音やメモがあるか。匿名でも聞き取りはしてもらえます(国のガイドライン)
- 今回の幼稚園型認定こども園のケースは、保護者の抗議と録音がきっかけでした。違和感をメモしておくことが、事実確認の助けになります
岡山の保育施設の虐待についてよくある質問
- 岡山県で保育施設の虐待は何件ありましたか?
-
岡山県の2026年10月15日の公表では、2025年10月から2026年3月までに3件です。幼保連携型認定こども園(放棄・放置)、認可外保育施設(身体的・心理的虐待)、私立幼稚園型認定こども園(心理的虐待)が1件ずつで、被害を受けた子どもは5人でした。
- どこの保育園か施設名は公表されていますか?
-
公表されていません。法律で公表するのは件数や虐待の類型、施設の種別、職員の職種、措置の内容で、国のガイドラインも施設に制裁を与える趣旨ではないとしています。
- 保育所の虐待の通報義務はいつからですか?
-
改正児童福祉法などが施行された2025年10月1日からです。保育所の職員に限らず、虐待を受けたと思われる子どもを見つけた人は、速やかに都道府県か市町村に通報しなければなりません。
- 保育士が虐待を通報したら職場で不利になりませんか?
-
児童福祉法33条の12で、通報を理由に解雇などの不利益な扱いをしてはならないと定められています。うその通報や過失による通報は除かれます。
- 不適切保育と虐待はどう違うのですか?
-
以前のガイドラインは「不適切な保育」を虐待が疑われる事案として広く扱っていました。2025年8月の改訂からは、身体的・性的・ネグレクト・心理的の4つの虐待を軸に整理し直しています。虐待にあたらない行為も、改善が必要なことに変わりはありません。
- 保育園の虐待はどこに通報すればいいですか?
-
施設のある市町村の保育担当課か、岡山県に連絡します。どちらに入れても担当の自治体に引き継がれます。子どもが今危ない場合は110番です。
まとめ
- 岡山県が初めて公表した保育施設などの虐待は3件・子ども5人。最も重い措置は改善勧告
- 児童福祉法分は通報14件中2件が認定。対象は制度が始まってからの半年だけ
- 鳥取県や国の調査とくらべても、件数が少なく、多い・少ないを判断できる段階ではない
- 通報義務は2025年10月1日から。保護者も含め誰でも、市町村か県に通報できる
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- 岡山県 令和7年度における施設従事者等による虐待の状況について(2026年10月15日)
- 同 公表資料PDF
- 岡山県 令和7年度における幼稚園等の職員による虐待の状況について(2026年10月15日)
- 同 公表資料PDF
- こども家庭庁・文部科学省 保育所や幼稚園等における虐待の防止及び発生時の対応等に関するガイドライン
- こども家庭庁 保育所等の職員による虐待に関する通報義務等について
- 児童福祉法(e-Gov法令検索)
- こども家庭庁・文部科学省 保育所等における虐待等の不適切な保育への対応等に関する実態調査 自治体等調査の結果(2023年5月)
- こども家庭庁 昨年来の保育所等における不適切事案を踏まえた今後の対策について(2023年5月)
- 鳥取県 令和7年度鳥取県教育・保育施設等における虐待事案について(2026年6月10日)
- 岡山県 統計資料 保育所等利用児童数(こども家庭庁「保育所等関連状況とりまとめ」2025年4月1日)
- 岡山市 よくある質問(保育施設の担当課)
- KSB瀬戸内海放送(2026年10月15日)
- OHK岡山放送(2026年10月15日、Yahoo!ニュース)
- 山陽新聞デジタル(2026年10月15日)
- NHK岡山(2026年10月15日)
- 朝日新聞(2026年10月15日、dメニューニュース)
※1万人あたりの件数は、保育所等利用児童数(2025年4月1日)で割った目安です。岡山の通報件数15件は朝日新聞の報道によります。


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