岡山弁版・昔話「桃太郎」

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むかしむかし、あるところにな、じいさんとばあさんがおったんじゃ。
じいさんは山へ柴刈りに、ばあさんは川へ洗濯に行きょった。

その川ぁ、まあよう澄んどってな、水底まで見えるくらいきれいじゃった。
ばあさんは「ええ天気じゃなぁ」と言いながら、せっせと洗濯しょったんじゃけど、
そのとき、上流のほうから、どんぶらこっこ、どんぶらこと、
なんとも立派な桃が一つ流れてきたんじゃ。

ばあさんは目ぇを丸うして言うた。
「おおっ、こりゃあまあ、えらいでっけぇ桃じゃがなぁ!
 こんなええ桃ぁ、きっと山の神様からの贈りもんじゃろう」

そう言うて、ばあさんは桃を抱えて家へ帰った。
山で柴刈りしょったじいさんも帰ってきて、
「ばあさんや、今日はえらいええ顔しとるなぁ、なんかええことあったんか?」
と聞くと、ばあさんはにっこり笑うて、
「そりゃあそうじゃが、見てみぃ、こねぇな大きい桃が流れてきたんじゃ!」
言うて、台所の真ん中に置いたんじゃ。

「ほうほう、こりゃまた立派な桃じゃなぁ。
 わしら二人で分けて食べようかのう」

言うて、じいさんが包丁を持ってきて、
ぱっくり真ん中を割ろうとした、そのときじゃ。

「うわぁーん!」

なんと、桃の中から元気のええ赤ん坊が飛び出してきたんじゃ!
じいさんもばあさんも腰を抜かすほどびっくりして、
「な、なんじゃこりゃ!」と声を揃えて叫んだ。

赤ん坊はつやつやした頬でにこっと笑うて、
「おじいさん、おばあさん、わたしは天から授かった子じゃ。
 どうぞよろしくお願いします」と言うた……ような気がしたんじゃ。

じいさんとばあさんは涙を流して喜び、
「こりゃあ神様の授けてくださった子じゃ。
 桃から生まれたけぇ、桃太郎と名づけよう」
言うて、たいそう大事に育てたんじゃ。


桃太郎はぐんぐん大きゅうなって、
十歳も過ぎるころには、村の子どもたちが誰もかなわんほど力が強うなった。
どんな重い石も軽々と持ち上げて、川の向こうまで放り投げるくらいじゃった。
けんども、心は優しゅうて、弱いもんをよう助けてやる子じゃった。

ある日、村にえらい知らせが入った。
「鬼ヶ島いうところにおる鬼どもが、村々から金銀や米、
 着物までも奪うていきょるんじゃ」

みんな困り果てとって、
「どうしたらええんじゃろうなぁ」
と顔を見合わせるばっかりじゃった。

そしたら桃太郎が立ち上がって言うた。
「わしが鬼ヶ島へ行って、鬼を退治してくるけぇ、みんな心配せんでええ!」

じいさんもばあさんも最初はびっくりして止めたけど、
桃太郎の目は真剣じゃった。
「おじいさん、おばあさん、わしはこの村を守りたいんじゃ。
 どうか旅の支度をさせてください」

そう言う桃太郎に、ばあさんは涙ぐみながら、
「ほんならせめて、これを持っていきんさい」
と、心を込めて作ったきびだんごを包んで渡した。


桃太郎は腰に刀を差して、きびだんごを持って旅に出た。
途中、山道を歩いとったら、一匹の犬が出てきて言うた。
「桃太郎さん、どこへ行くんじゃ?」

「鬼ヶ島へ、鬼退治に行くんじゃ」

「おぉ、そりゃええ。お腰のきびだんご一つくれたら、
 わしもお供いたしますで」

桃太郎は笑うてきびだんごを一つ渡した。
「よっしゃ、仲間じゃな。頼むで!」

次に、森を抜けると、猿が木の上から声をかけてきた。
「桃太郎さん、どこ行くんじゃ?」

「鬼ヶ島へ、鬼退治じゃ」

「ほんなら、きびだんご一つくれたら、わしもついて行くで」

「よっしゃ、ほんならお前も仲間じゃ」

さらに歩いていくと、川のほとりでキジが羽ばたきながら言うた。
「桃太郎さん、どこ行くんじゃ?」

「鬼ヶ島へ、鬼退治じゃ」

「そりゃ勇ましい。きびだんご一つくれたら、わしも行くで」

こうして、犬と猿とキジの三匹が仲間になって、
いよいよ鬼ヶ島へ向かうことになったんじゃ。


鬼ヶ島に着いたら、そこは荒れ狂う波の向こうに立つ黒い岩山で、
洞窟の奥からは鬼どもの笑い声と酒の匂いが漂うてきょった。

桃太郎は仲間たちに言うた。
「みんな、気ぃ引き締めぇよ。今こそ力を合わせるときじゃ!」

犬は牙をむいて門の前を守る鬼を噛みつき、
猿はするすると塀を登って中の門を開け、
キジは空から鬼どもの目ぇをつついて大混乱じゃ。

桃太郎は刀を抜いて叫んだ。
「悪いことばっかりしとる鬼ども!
 村の人から奪うたもん、ぜんぶ返してもらうでぇ!」

鬼たちは「なんじゃこりゃ、たった一人の人間か!」と笑うたが、
桃太郎はびくともせん。
犬が尻を噛み、猿が顔をひっかき、キジが頭をつつき、
桃太郎の剣がひらめいた。

鬼の大将・赤鬼は太い鉄棒を振りかざしたが、
桃太郎は軽やかにかわして、見事に刀で赤鬼の角を切り落とした。

「まいった、まいった!もう悪さはせん!
 金銀財宝も、ぜんぶ返すけぇ、命だけは助けてくれぇ!」

桃太郎はきっぱり言うた。
「ほんまにもう悪させんか?」

「誓う!誓うけぇ、どうか堪忍してくれぇ!」

桃太郎は少し考えて、刀をおさめた。
「ほんなら、二度と悪させんように、きっちり心入れ替えぇよ。
 これからは真面目に働け」

鬼たちは頭を下げて泣いて詫び、
村から奪うた財宝を山のように積んで渡したんじゃ。


桃太郎と仲間たちは、宝を山車に積んで村へ帰った。
村人たちは大喜びして、
「桃太郎さん、ようやってくれた!これで安心じゃ!」
と拍手喝采じゃ。

じいさんとばあさんも涙を流して桃太郎を抱きしめた。
「よう帰ってきたなぁ、無事で何よりじゃ」

桃太郎は笑うて言うた。
「わし一人じゃできんかった。犬と猿とキジ、
 みんなのおかげじゃ」

それからというも、鬼ヶ島の鬼たちは改心して、
海辺で漁をしたり、畑を耕したりして、
人間たちと仲良う暮らすようになったそうな。

桃太郎は村のみんなに尊敬され、
おじいさんとおばあさんと一緒に、
いつまでも幸せに暮らしたんじゃと。


終わりに

今でも岡山の人らぁは、桃太郎の話を聞くと、
「ようけ元気が出るなぁ」言うて笑う。
それはきっと、どんな困難でも立ち向かう勇気と、
人の情けを忘れん心が、この話に詰まっとるけぇじゃろう。

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