【もしも桃太郎が竈門炭治郎だったら?】心優しき剣士の鬼退治 in 桃太郎ワールド

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目次

序章:川より来たる者

むかしむかし、ある山深い村に、炭焼きを生業とする老夫婦が住んでおりました。

その夫婦は、年老いてもなお温かな心を持ち、日々手を取り合って慎ましく暮らしておりました。けれど、一つだけ心に空いた隙間がありました。それは、子どもに恵まれなかったことです。

「お前さん、今日の炭はいい出来じゃのう」

「ほうじゃ。あんたの山の焼き方は、若いもんにゃ真似できん」

そんなやり取りを重ねながらも、ふたりの心の奥には、誰にも見せぬ寂しさが流れておりました。

ある春の日のこと。

おばあさんは、いつものように山を下り、村の外れを流れる川で洗濯をしていました。冷たい水に手を浸しながら、白い布をこすっていると――

「どんぶらこ…どんぶらこ…」

どこからともなく、不思議な音が聞こえてきました。

目を上げると、川上から一つの大きな桃が、ゆっくりと流れてきていたのです。

「これは…なんとまあ、立派な桃じゃ!」

その桃は、普通の桃とは違い、淡い光を帯びていました。まるで太陽のかけらを包み込んだように、ほんのりと暖かい。おばあさんは慎重に桃をすくい上げ、持ち帰ることにしました。

家に戻ると、おじいさんは目を丸くしました。

「なんじゃその桃は!? わしの生涯で、こんな大きな桃は見たことがないぞ」

ふたりは桃を割って食べようとしました。包丁を入れたその瞬間――

ボンッ!

と音を立てて、桃が真っ二つに割れました。

そこから現れたのは、一人の少年でした。

額に傷を持ち、整った顔立ちに穏やかな眼差し。羽織は黒と緑の市松模様。背には、一振りの刀を背負っています。

「…こんにちは。僕の名前は、竈門炭治郎です」

老夫婦は驚きながらも、少年の礼儀正しさと優しさに心を打たれました。

「炭治郎かえ…よう来てくれたのう」

「うん、なんだかね、この村が…とても大切な気がして」

炭治郎はそう微笑みました。

この日を境に、老夫婦の家には笑い声新たな火が灯りました。

少年は山で木を割り、炭を焼き、老夫婦を助けながら暮らします。まるで、もともとこの村にいたかのように、自然と馴染んでいきました。

けれど――炭治郎には、時折夜になると、夢の中に現れる不思議な映像がありました。

燃える家。手を伸ばしても届かない妹の背。血に濡れた雪。優しかった母の声。

「…禰豆子…」

その名をつぶやく炭治郎の胸には、まだ何か果たすべき使命が残っているようでした。

そして、ある日。

村に鬼が現れたのです――。

第一章:炭焼きの記憶

桃より生まれし少年、竈門炭治郎は、村の人々の間でもたちまち評判になった。

力持ちで働き者、そして何より、人の心の機微に寄り添う優しさを持っていたからだ。

「炭治郎くん、ありがとうね。薪が足りなくて困ってたのよ」

「大丈夫です、おばあさん。また明日も持ってきますから」

小さな子どもが転べば、すぐに駆け寄って声をかけ、年寄りの背を支え、村の誰に対しても分け隔てなく接する炭治郎。老夫婦の家にやってきてから、わずか一月ほどで、村の風景そのものになっていた。

しかし、彼の心には、誰にも語らぬ記憶があった。

夜、眠りにつく前。

囲炉裏の火がパチパチと音を立てる中、ふと夢に引き込まれるような感覚に陥る。

――雪に染まった山道。

――血に染まった家族。

――鬼に変わり果てた妹。

「ねずこ…」

その名を、無意識に呼ぶ。

老夫婦は、彼の夜泣きに幾度か気づいたが、そっと見守るだけだった。彼が語ろうとしないなら、それもまた彼の優しさなのだろうと――。

だが、ある日。

村の外れにある山の中で、動物たちの死骸が無惨な形で見つかるという事件が起きた。

「これは…獣の仕業ではない」

村人たちはざわついた。炭治郎も、その現場を見に行った。

そして――

「これは、鬼の仕業だ」

静かに、だが確信を持ってそう口にした。

驚いた村人たちに、炭治郎は語った。

「僕には記憶がありません。でも、この臭い、この痕跡…わかるんです。僕の体が覚えている。鬼に関わっていた過去があるんだと…」

その日、炭治郎は、老夫婦に初めて自分の夢の内容を打ち明けた。

「僕は、もしかしたら、鬼を狩る者だったのかもしれません」

おじいさんは、黙って火箸を握ったままうなずいた。

「お前の背中には、刀がある。村を救ってくれ。桃から生まれたという運命が、きっと意味を持つはずじゃ」

その言葉に、炭治郎は深くうなずく。

「この村に…あのときの家族と同じ思いは、させない」


翌日、炭治郎は山の中で気配を察知する。

冷たい風、木々のざわめき、わずかに混じる血と腐臭

「来てるな…」

刀に手をかけ、炭治郎は木々の合間を縫って走る。

やがて、開けた小さな空間で、何かを喰らう姿が見えた。

それは人ではない。

目が黄色く輝き、爪は鋭く、皮膚はくすんだ灰色。

鬼だった。

「…やはり、お前は鬼だな」

鬼は振り返る。

「…なんだ、お前、人間か? いや、違う…妙な匂いがする」

「僕の名は、竈門炭治郎。村を、守るために来た」

鬼は嗤う。

「ハッ、ただの人間が何を――」

その瞬間、炭治郎は踏み込んだ。

日輪刀が、空を裂くように振り下ろされる。

「水の呼吸 壱ノ型――水面斬り!」

鬼は声もなく、その場に崩れた。

静寂の中、炭治郎は刀を納め、深く息を吐いた。

彼の胸の奥に眠っていた「剣士」としての記憶。

それは、まるで火が炭に移るように、静かに、しかし確かに彼の体へと戻っていた。


村に戻ると、彼は何も言わず、ただ黙って祠の前に座った。

老夫婦は彼の姿を見つけ、そっと寄り添うように膝をついた。

「炭治郎、何があったんじゃ?」

「…鬼が、いました。でも…倒しました」

「…そうか…お前さんは…やはりただ者じゃなかったんじゃのう」

炭治郎は微笑みながらも、どこか遠くを見るような目をしていた。

「この村だけじゃない。僕の中には…もっと多くの人を守らなければならない記憶がある気がします。だから…もう一度、旅に出ようと思います」

そして――炭治郎は「旗」を背負った。

老夫婦が縫ってくれた、桃の印が入った旗。

新たな鬼の影を追う旅が、いま、始まろうとしていた。

第二章:村に迫る鬼の影

炭治郎が初めて鬼を斬ってから数日後、村は不穏な空気に包まれていた。

倒したはずの鬼は、どうやら“先遣”にすぎなかったらしい。村の子どもたちの間では、夜になると森の奥から不気味な呻き声が聞こえるという噂が広がり、大人たちの顔も日に日に曇っていった。

ある晩、村の集会所に人々が集まり、対策を話し合っていた。

「村を囲む結界のようなものを作るべきだ」

「いや、それよりも皆で山を下って避難すべきでは?」

そんな議論が飛び交う中、炭治郎が静かに立ち上がった。

「…皆さん、恐れる気持ちはよくわかります。でも、逃げてばかりでは、またどこかで誰かが同じ目に遭う。だから、僕が…鬼の巣に乗り込みます」

その言葉に、場が凍りついた。

「若者よ…それは無謀ではないか。お前は確かに強い。だが相手は…」

「構いません。僕にはそのための力があります。そして――この村で過ごした日々が、僕の背中を押してくれるんです」

彼の眼差しは、まっすぐで揺るぎなかった。

老夫婦は、少し涙ぐみながら、そっと彼の荷物にきび団子を忍ばせた。

「これは、昔話に出てくる桃太郎のように、仲間と出会ったときに分けてやるのじゃよ」

炭治郎はそれを受け取って、深く頭を下げた。

「ありがとうございます。必ず、村を守って戻ってきます」


翌朝、炭治郎は、村を出て山道を歩き出した。

空は雲ひとつなく晴れ、鳥の声がどこまでも透き通っていたが、彼の心には不思議と緊張感はなかった。

「…どこかで、この道を前にも歩いた気がする」

身体の奥に眠る記憶が、彼を導くように足を進ませる。

やがて、一本の太い木の下で、一人の男が立っていた。

鋭い眼光と、奇妙な被り物――それは、猪の頭を被った野生のような男、嘴平伊之助だった。

「てめえ、誰だ。ここは俺の縄張りだぞ!」

突然襲いかかってくる伊之助に、炭治郎は刀を抜かずに応じた。

「戦うつもりはない!僕は鬼を探しているだけなんだ!」

「はァ!? 鬼? それならとっくにここらにはいるぞ!昨日なんか、でけぇやつが出てきて、俺の獲物を横取りしやがった!」

炭治郎は目を見開いた。

「その鬼…どこに行ったか、わかるか?」

「ついてこい!俺が案内してやる!」

あまりにも急な展開に戸惑いつつも、炭治郎は彼の後についていく。

道中、伊之助の戦い方に驚かされた。型などなく、完全に野生の本能だけで動いている。だが、それはそれで鋭さと威力を持ち合わせていた。

炭治郎は、きび団子を差し出しながら言った。

「よかったら、これを食べて。仲間になってほしいんだ」

伊之助は最初、「団子!?ふざけんな!」と言いながらも、ひとくち食べた途端、黙り込み…そのまま全部たいらげた。

「…うまい。気に入った。お前、俺の子分になれ」

「いや、僕がリーダーなんだけど…」

そんな調子で、最初の仲間・伊之助が加わった。


さらに山を越えた先、夕暮れの村で出会ったのは、泣きながら叫んでいる金髪の青年だった。

「いやだぁぁぁあああああ!!鬼なんて無理ぃぃぃ!」

炭治郎はその姿に見覚えがあった。記憶の奥底に、何度も耳にしたその叫び声。

「…我妻善逸?」

そう呼ぶと、男はビクリと震えた。

「え?え?なんで俺の名前…うわっ!お前鬼の仲間だろ!?俺を殺す気だぁぁぁぁ!!」

「違う!僕は君と一緒に鬼を退治する仲間だったんだ!」

炭治郎の真剣な目に、善逸はしばし口をつぐんだ。

やがて、ぽつりと言った。

「…夢の中で、君と一緒に戦ってる気がしてたんだ。でも俺、怖くて、また逃げ出したくて――」

炭治郎は、きび団子を差し出した。

「君の中には、強い力がある。信じてるよ」

善逸はそれを受け取り、涙ぐみながらうなずいた。

こうして――

猪の皮を被った戦士・伊之助
雷を宿す臆病者・善逸

二人の仲間が、炭治郎の元に集った。


夜。三人は焚き火を囲みながら、旅の行き先について話していた。

「鬼の本拠地、それは――“鬼ヶ島”と呼ばれているらしい」

善逸の持っていた地図には、海の果てにぽつんと描かれた島があった。

「村の言い伝えでは、そこには“黒鬼王”が棲み、四体の配下“鬼の将”を従えているらしい」

伊之助が鼻を鳴らす。

「やってやろうじゃねぇか。そいつら、全員ぶっ飛ばしてやる!」

炭治郎は静かに刀を見つめながら、言った。

「行こう。僕たちなら、きっと…できる」

そして、焚き火にかざされた桃の家紋入りの旗が、夜風に揺れていた。

第三章:旅立ちの旗と決意

鬼ヶ島。

その名を聞くだけで、海辺の村々では語り継がれる恐怖があった。
かつて多くの旅人がその島を目指して船出したが、戻ってきた者は誰一人いなかった――と。

炭治郎たちは、その鬼の本拠地に乗り込むため、最も近い港町「海笛(うみぶえ)」へとたどり着いた。

港町には活気があったが、日が落ちると町の人々は家々に鍵をかけ、誰も外に出ようとはしなかった。理由を尋ねると、夜になると沖のほうから奇妙な唸り声と霧が現れるという。

「鬼ヶ島の呪いじゃ」と、ある漁師がささやいた。

炭治郎は港の桟橋に立ち、海の向こうにある“島”を静かに見つめていた。
その視線の先には、記憶に残る“誰か”の姿があった。

それは――禰豆子

「…妹を、助けるんだ。必ず」


港町での準備を進める中、善逸は船の設計図とにらめっこしていた。

「ええ!?この船、もう百年も使ってないって!?沈むよ沈む!絶対ムリだって!」

伊之助はすでに船の上で跳ね回っていた。

「沈んでも泳げばいいじゃねぇか!俺は泳げねぇけどな!」

「泳げねーんかい!」

炭治郎はそんなふたりに笑いながらも、着実に出航の準備を進めていった。
そして――出航前夜、町の神社にて祈りを捧げることにした。

神主が差し出した御守りには、桃の紋ともう一つ、“祓”の字が刻まれていた。

「それは鬼を祓う者に授ける印。おぬしらの旅路が、無事でありますように」

炭治郎は深く頭を下げ、その御守りを帯に結んだ。


翌朝――

空は快晴。風は穏やか。波も静か。

いよいよ出航のとき。

船の帆には、老夫婦が仕立てた桃の家紋の旗が掲げられていた。

「これが…僕たちの誓いの印」

炭治郎が小さく呟くと、伊之助が叫んだ。

「行くぞ!鬼ヶ島ァァァァ!!」

善逸は半泣きで叫んだ。

「ほんとに行くのぉぉ!?帰ってこられるのぉぉ!?」

炭治郎は微笑みながら、空を見上げた。

「行こう。すべてを終わらせるために」

帆に風が張り、船はゆっくりと港を離れていく。

その瞬間、風が一層強くなり、空の雲が割れ――

光の柱が海上に降り注いだ。

そして――

船の甲板に、一つの木箱が現れた。

「っ!? これは…」

炭治郎はその木箱を見て、言葉を失った。
木箱には、かつて自分が守っていた記憶があった。

そっと蓋を開けると、そこにいたのは――

禰豆子。

眠ったままの少女の姿。だが、その顔には苦しみの色はなかった。
静かに眠り、そして目をゆっくりと――

「……兄…ちゃん…?」

「…禰豆子…!本当に…!禰豆子!」

炭治郎は、彼女を強く抱きしめた。

伊之助と善逸も、しばしその場で立ち尽くしていた。

「…あれが…禰豆子…」

善逸は目を潤ませながらつぶやく。

「やっと…また会えた…」

禰豆子はまだ完全には目覚めていなかったが、確かに炭治郎の腕の中にいた。

かつての約束――

「禰豆子を人間に戻す」

その約束が、再び動き出す。


夜。海の真ん中を進む船の上で、炭治郎は星を見上げながら心の中で誓った。

「鬼を倒す。それだけじゃない。禰豆子を、元の姿に戻して、みんなで…家に帰るんだ」

彼の眼差しには、今までよりも遥かに強い光が宿っていた。

そして――遠く水平線の先に、黒くそびえ立つ影が現れた。

鬼ヶ島。

物語はついに、本拠地へと到達する。

第四章:きび団子と仲間たち

黒き雲が空を覆い、海が不気味なうねりを見せ始めた――

炭治郎たちを乗せた船は、鬼ヶ島の岸へとゆっくりと進んでいく。
上陸を迎えるその瞬間、風の音が一転し、まるで獣の唸り声のような轟音に変わった。

禰豆子はまだ木箱の中にいたが、微かに目を開け、兄の名を夢の中で呟いている。

「大丈夫だよ、禰豆子。僕たちが必ず、君を守る」

炭治郎はそう語りかけ、波打ち際へと飛び降りた。

伊之助が興奮気味に叫ぶ。

「やっと着いたなぁ!この島、全部ぶっ壊してやる!」

善逸は、膝を震わせながらついていく。

「ひいいいぃ…!何この空気…空が怖い!地面が怖い!匂いが怖い!何もかも怖い!」

だが炭治郎の表情は、静かだった。

「この先には、仲間を待つ者がいる。命を奪い、悲しみを振りまいた鬼たちがいる。――絶対に、止めなきゃいけない」

彼らの足元には、異様な霧が立ち込めていた。

その霧の中から――低く、響く声がした。

「桃から生まれた者…剣を持つ者…我が島へよくぞ来た」

「誰だ!」

伊之助が咆哮するが、声の主は姿を見せぬまま続けた。

「我が名は“氷鬼”。四鬼将のひとり」

霧が一気に晴れ、冷気が吹き荒れる。

そこに現れたのは、氷の鎧をまとい、青白く輝く目を持つ男だった。

「この島に足を踏み入れた時点で、お前たちの命運は尽きたのだ」

炭治郎は、真っ直ぐに氷鬼を見据えた。

「僕たちの命は、僕たちの意志で使う。誰にも奪わせない!」

伊之助が刀を交差させるように構え、善逸は一歩後ろで震えながらも覚悟を決めていた。

そして、戦いが始まった――!


氷鬼 VS 桃太郎たち

氷鬼の放つ冷気は、地面すら凍らせる。踏み込むたびに滑り、動きが鈍る。

「くっ…冷たいというより、体の芯を凍らされる…!」

炭治郎は苦戦を強いられながらも、冷静に呼吸を整える。

「水の呼吸では相性が悪い…けど――」

彼は剣を握り直す。

「火がいる。ここには火が必要だ…!」

その時、伊之助が飛び込んだ。

「俺に任せろォォォ!!獣の呼吸・伍ノ牙《狂い裂き》!!」

氷鬼の鎧を真正面から引き裂こうとするが、逆に氷の槍が全身を包み込み、吹き飛ばされた。

「伊之助!!」

善逸が恐怖を振り切るように叫ぶ。

「ダメだ…俺だって…!俺にだって…!」

雷の呼吸――壱ノ型。

「霹靂一閃!」

稲妻のような一撃が、氷鬼の肩をかすめた。

「なにっ…!」

炭治郎は、その隙を見逃さない。

「日の呼吸・参ノ型――烈日紅鏡!!」

熱風が冷気を押し返し、氷鬼の鎧にヒビが入る!

氷鬼は苦悶の表情を浮かべ、後退する。

「こやつら…連携が…」

炭治郎は叫ぶ。

「善逸!伊之助!今だ!三人で一気に叩くぞ!」

氷鬼が全身の冷気を爆発させたその時――

三人の剣士の技が重なった。

「水の呼吸・拾ノ型!生生流転!!」
「雷の呼吸・神速!!」
「獣の呼吸・参ノ牙!喰い裂き!!」

三方向から同時に叩き込まれた連撃が、氷鬼を貫いた。

「馬鹿な…これほどまでの…連携とは…」

氷鬼は崩れ、氷の鎧が砕け散る。

霧が晴れ、空に光が差し込む。

勝利だった。


氷鬼の亡骸のそばで、炭治郎は黙って合掌していた。

「鬼もまた、かつては人だった」

そう口にする炭治郎の目には、哀しみが宿っていた。

伊之助が肩を組んできた。

「オイ、勝ったんだぞ!しけた顔すんなよ!」

善逸も肩を落としながら言う。

「まだ…あと三体いるんだよね…鬼将…」

炭治郎は、刀の柄を握り直した。

「でも、僕たちはここまで来た。仲間と一緒なら、きっと乗り越えられる」

その言葉に、ふたりも静かに頷いた。

そして、木箱の中の禰豆子が、そっと身を起こして――

「……兄ちゃん」

目を覚ました。

第五章:夢鬼と無限回廊

氷鬼を倒したことで、鬼ヶ島の北部一帯にはしばしの静寂が訪れた。
だが、炭治郎たちはそれが一時的なものであることを理解していた。

「残る“鬼の将”はあと三体…」

伊之助は叫んだ。

「どいつもこいつも来ねえなら、こっちから出向いてやるだけだ!」

善逸はビクビクしながらも頷いた。

「もう、帰れないなら前に進むしかないんだよね…うん、わかってる…でも怖い…!」

そのとき、背後の木箱から、声がした。

「……兄ちゃん」

炭治郎は振り返り、驚きと喜びに目を見開いた。

「禰豆子…!」

彼女はゆっくりと木箱から身を起こし、周囲を見渡した。

「ここは…どこ?」

「大丈夫。僕たちは今、鬼ヶ島にいる。鬼たちを止めるために来たんだ」

禰豆子は炭治郎の手を取った。

その手の温もりに、彼は確かな“帰る場所”を感じた。


禰豆子が目覚めたことにより、四人の隊列が揃った。

そして、鬼ヶ島の東に広がる**洞窟地帯「夢の回廊」**へと足を踏み入れる。

空間は不気味なまでに静かで、音が吸い込まれていくような異様な気配に包まれていた。

「気をつけて、ここ…何かおかしい」

炭治郎は刀の柄に手を添えながら、周囲を見渡す。

その瞬間――

視界が歪んだ。

「…っ!?」

次の瞬間、彼らはそれぞれ、違う空間に引きずり込まれていた。


――炭治郎の夢の世界

彼の目の前には、かつての家。
家族の笑い声。母の手料理。幼い禰豆子が無邪気に笑っている。

「……こんな……はずじゃ…」

炭治郎は膝をついた。

「俺は…過去に戻りたいわけじゃない…でも…こんな景色を…もう一度見たかった…」

そのとき、背後から声が聞こえた。

「戻ればいいのよ。すべてを忘れて、ここにいればいいの」

現れたのは――“夢鬼”。

長い黒髪に艶やかな瞳。夢を操る力を持ち、人々を安らぎの眠りへと誘う。

「この夢は、あなたが望んだもの。現実よりも幸せじゃない?」

炭治郎は静かに立ち上がった。

「違う。たとえ辛くても、現実にしか救えない命がある」

その言葉と共に、日輪刀を握る。

「俺は…目を覚ます!――“ヒノカミ神楽・円舞”!」

刀が炎を帯び、夢の世界を焼き払う!

夢鬼の幻影が悲鳴を上げて消えていった。


――伊之助の夢

巨大なイノシシと戦う夢。

「おおおおっ!オレ様がオレ様と戦ってるぅぅぅ!!」

己の幻と斬り合いながらも、伊之助は気づく。

「つえぇ…でもこいつ、俺の中の弱気か…?」

「この夢の世界に永遠にいれば、お前は王になれる」

夢鬼が囁く。

だが伊之助は吠えた。

「オレ様は“現実”のてっぺんしか興味ねえんだよォ!!」

“獣の呼吸・肆ノ牙!切細裂き!”

夢を突き破り、現実へ帰還する。


――善逸の夢

なぜか禰豆子と二人きりの妄想夢。

「いやああああああああ!!やっぱりこれは夢なんだぁぁぁ!!」

“夢鬼が作った甘美な理想の世界”を、自らぶち壊して脱出するという謎の精神力を見せた。

「俺の妄想を勝手に覗くなぁぁぁ!!!」


――禰豆子の夢

彼女の夢には、兄がいない。

ただひとり、暗闇の中を歩き続ける。

「…兄ちゃん…どこ?」

そのとき、微かに聞こえた声。

「禰豆子…目を覚まして」

兄の声。

その声に導かれ、彼女の瞳が赤く輝いた。

「血鬼術――爆血!!」

夢の空間が爆発的な炎に包まれ、彼女は現実へと戻った。


四人が同時に目を覚ましたとき、夢鬼は驚愕していた。

「全員…目を覚ますなんて…!」

「現実に抗ってでも、守りたいものがあるんだ」

炭治郎がそう叫ぶと同時に、四人が一斉に飛び出す。

「水の呼吸・肆ノ型・打ち潮!」
「雷の呼吸・六連!」
「獣の呼吸・乱杭咬み!」
「爆血!!」

夢鬼は防ぐ間もなく、その身を焼かれ――

「こんな結末…こんな…夢見てなかった…!」

静かに崩れた。


夢の空間は消え、洞窟には静けさが戻った。

「炭治郎…」

禰豆子が兄の肩に手を添えた。

「うん、大丈夫。ありがとう、禰豆子。戻ってきてくれて」

伊之助は吠えた。

「あと二体だなァ!次はもっと強い奴、来いやァ!!」

善逸は地面にへたり込んでいた。

「夢の中の俺、もうちょっと理性的に振る舞ってくれ…!」

炭治郎は、空を見上げながら静かに言った。

「この島の奥には、きっとすべての答えがある。…あの“黒鬼王”の正体も」

第六章:黒鬼王の正体と、終わりなき夜

夢鬼を打ち破った炭治郎たちは、鬼ヶ島の中央部へと進んでいた。

山の斜面を登りきった先――
そこには、重々しい黒き石で築かれた巨大な城があった。
空を覆う雲は血のように赤く染まり、風は冷たく、どこか“死”の匂いが漂っている。

「…ここが、黒鬼王の本拠地か」

炭治郎は刀を抜き、空を見上げた。

その背後には、頼れる三人の仲間――伊之助、善逸、禰豆子。

「行こう。きっとこの奥に、全ての答えがある」


城門をくぐった瞬間、空間が歪んだ。

周囲の風景が一変し、四人はそれぞれ分断されていた。

「くっ…まただ!」

炭治郎が叫ぶも、声は誰にも届かない。

――そのとき、彼の前に現れたのは、異形の鬼。

黒く光る甲冑に身を包み、まるで武将のような姿。
その背には、巨大な太刀が三振。

「我が名は、“金剛鬼”。黒鬼王に仕える四鬼将の一角にして、守護の盾なり」

「なら、君を超えてみせる。仲間と再び合流するために!」

金剛鬼は剣を抜き、言った。

「お前の剣――試してみるがいい!」


炭治郎 VS 金剛鬼

一振りごとに地面が砕けるほどの破壊力。

「重い…!でも――負けられない!」

炭治郎は、水と火の呼吸を切り替えながら、攻撃を受け流す。

「“ヒノカミ神楽・幻日虹”!」

残像を駆使しながら切り込むも、金剛鬼は一歩も引かない。

「その刃、確かに鋭い。だが――足りぬ。鬼王には届かぬ」

そのとき、炭治郎の意識に、かすかな声が響いた。

――「兄ちゃん、忘れないで」

禰豆子の声。家族の声。仲間の声。

「…違う!僕は、ひとりじゃない!!」

その言葉とともに、金剛鬼の懐に飛び込む。

「“ヒノカミ神楽・碧羅の天”!!」

炎が天へと昇り、金剛鬼の鎧を焼き裂いた。

金剛鬼は膝をつき、崩れ落ちた。

「…お前の剣に、守りたいものがあるのか…」

「あるよ。家族も、仲間も、命も、希望も…全部だ!」

炭治郎はその場に膝をつき、深く息を吐いた。


同時刻、善逸と伊之助もそれぞれの戦いに身を投じていた。

善逸は、空中に浮遊する“幻聴鬼”との対峙。

あらゆる方向から届く“声”に惑わされながらも、禰豆子への想いを胸に剣を振るい、
「雷の呼吸・神速・参連」でその姿を断つ。

伊之助は“泥鬼”と名乗る鬼に地中から襲われ、泥に飲まれながらも、
「獣の呼吸・思いつきの牙」で豪快に突破。

二人とも、炭治郎との約束を胸に、勝利を掴んでいた。


そして、禰豆子の前にも、最後の鬼将が現れる。

「妹よ…眠りから覚めたか」

黒く長い髪、凛とした瞳を持つその鬼は、どこか炭治郎に似ていた。

「我は“影鬼”――黒鬼王の分身なり」

「……兄ちゃんに…似てる。でも、違う」

禰豆子は静かに拳を握る。

「私は、兄ちゃんの“光”を知ってる!」

その言葉と共に、血鬼術“爆血”が炸裂する!

「爆血・陽華の舞!!」

紅蓮の花が咲き誇り、影鬼を焼き尽くした。


ついに、四人は城の中心に集結した。

炭治郎は仲間たちに向かって微笑む。

「ありがとう…みんな、本当に…」

だが、その瞬間。

重く、響く声が天井から落ちてきた。

「ようこそ、勇敢なる者たちよ」

姿を現したのは――

玉座に座す、黒鬼王

巨大な漆黒の装束を纏い、顔は仮面で覆われている。
ただ、その瞳だけが、不思議なほど美しかった。

「私の名は、“無限”。哀しみを喰らい、夢を統べる者」

「無限…?お前が、この島の元凶か!」

炭治郎が叫ぶ。

「そうだ。そして――私こそが、お前の本当の“記憶”に通じる存在でもある」

炭治郎は一歩踏み出した。

「記憶…?」

「お前は、ただの桃から生まれた存在ではない。お前は――鬼と人の間に生まれた、調停者だ」

一同が息をのむ。

「お前は、もともと鬼を滅ぼすために作られた存在ではない。鬼と人、双方を理解し、調和させる“橋”となるために選ばれたのだ」

炭治郎の心に、かすかな記憶が蘇る。

――桃から生まれたその瞬間。
――人のぬくもり。
――鬼の叫び。

「僕が…鬼だった可能性があるというのか…?」

「そう。だからこそ、お前は“どちらの力も持っている”。さあ――この世界の悲劇を終わらせよう。私と共に、鬼と人が一つになれる世界を創るのだ」

その提案は、どこか魅力的でもあった。
苦しみがない世界。悲しみのない未来。

だが、炭治郎は静かに首を振った。

「違う。それは偽りの調和だ。違いを飲み込むことが、理解じゃない。互いに向き合うことが、本当の“橋”だ!」

黒鬼王・無限の瞳が、ほんのわずかに揺れた。

「そうか…ならば、力をもって語れ。お前の正義とやらを」

最終決戦の火蓋が、今――切って落とされる。

第七章:誓いの刃、果てなき戦い

漆黒の玉座からゆっくりと立ち上がる鬼――黒鬼王・無限

彼の足元には、どんな攻撃も通じなかった鬼将たちの亡骸が静かに横たわり、その身から放たれる圧は、空間そのものを歪めるようだった。

「では問う。人よ、なぜ戦う?」

無限は穏やかに問うた。

「我ら鬼は、人の憎しみ、欲望、弱さから生まれた存在。ならば、我らを滅ぼすということは――人の闇を否定するということに他ならぬ」

炭治郎は、強く、まっすぐに答えた。

「それでも、僕は守りたい。泣いている人がいるなら、命を賭けてでも――その涙を拭いたい」

「偽善だ」

「いいえ、それが“人間”です。弱くても、傷ついても、それでも前に進む。“鬼にはなれない”存在なんです!」

炭治郎の言葉に、善逸が続く。

「俺だって怖いよ。でも怖くても逃げない。…禰豆子の手を握ったとき、そう決めたんだ!」

伊之助が吠える。

「難しいことはわかんねーけどよォ!俺の仲間に手ェ出した奴は、全員ぶっ飛ばすだけだ!」

禰豆子も静かに立ち上がった。

「兄ちゃんと一緒に生きる。それだけで、私は…鬼じゃなくなれる!」

無限の表情が、微かに揺れた。

「…ならば見せよ。その想いを――この“永劫の夜”を越える刃で」

刹那――空が裂けた。

城の天井が消え、漆黒の空に無数の目と口が現れ、瘴気の雨が降り注ぐ。
床は崩れ、空中に浮かぶ戦場と化す。

最終決戦が、幕を開けた。


最終戦・開幕

無限の攻撃は、“影と光”の双属性。

その身から放たれる影の鎖が空間を拘束し、光の槍が一点を貫く。
善逸の雷の呼吸ですら捉えられ、伊之助の野生の動きも鈍らされていく。

「動きが封じられていく…!」

炭治郎は仲間を守りながら、無限の隙を探る。

「炎で光は断てる。だが影は…!」

そのとき、禰豆子が兄の前に出る。

「私の“爆血”…使って」

「でも…!」

「兄ちゃんは、皆を導いて。私は、支えるから」

禰豆子の血鬼術――爆血の結界が、無限の瘴気を一時的に浄化する。

「今だ!!」

炭治郎が飛び込む!

「“ヒノカミ神楽・烈日紅鏡”!!」

炎の弧が無限の鎧を貫く――だが、その奥にある“本体”にはまだ届かない。

「惜しい…だが、足りぬ。お前たちでは、届かぬ」

無限の周囲に、無数の“鬼の面影”が現れる。
今まで倒してきた鬼たちの幻影――それは、罪悪感と迷いを誘う幻だった。

「彼らもまた、誰かの家族だった」

「それでも…!」

炭治郎は叫ぶ。

「彼らは、人を喰った!誰かの未来を奪った!それを、肯定してはいけない!!」

その言葉に、仲間たちの心も呼応する。

善逸:「俺だって臆病者だけど…守りたい人のために、戦うことはできるんだ!!」

伊之助:「悲しみごと、ぶっ壊してやるよぉぉぉ!!」

禰豆子:「兄ちゃん…一緒に帰ろう!」

四人の想いが交差し、刀に宿る。

「“桃誓ノ型――四剣連鎖斬”!!!」

4人の技が一体化し、ついに――

無限の仮面が砕けた。

その下にあったのは、少年のような顔だった。

「あのとき…俺は…助けを…待っていたんだ…」

崩れゆく中で、彼は涙をこぼした。

「ありがとう…気づいてくれて…」

無限は静かに微笑みながら、光の粒となって消えていった。


決着、そして夜明け

戦いが終わり、崩れ落ちる鬼ヶ島。
だが、炭治郎たちの前には、太陽の光が差し込んでいた。

「…終わったんだね」

善逸が空を仰ぐ。

伊之助は肩を組み、叫んだ。

「おいおい、やるじゃねぇか、炭治郎ォ!」

禰豆子は、兄の手をぎゅっと握った。

「帰ろう、兄ちゃん。今度は――みんなで」

炭治郎は、涙をこらえながら微笑んだ。

「うん。帰ろう。僕たちの、桃の家に」

第八章:桃の帰還、未来への旅路

鬼ヶ島が崩れゆく中、炭治郎たちは島の桟橋へと戻ってきていた。

戦いの余韻がまだ体に残っている。

それでも、胸に宿るのは――深い安堵だった。

「……本当に、終わったんだね」

善逸がつぶやくように言った。

禰豆子は波の音を聞きながら、小さく頷いた。

「うん。兄ちゃんが、みんなが…守ってくれたから」

伊之助は大の字に倒れて空を見上げていた。

「オレ様、疲れた。腹減った。肉食いたい」

炭治郎は静かに微笑んで、空を見上げた。

空は、どこまでも澄み切っていた。
まるで、長い夜を越えた証のように――。


船での帰還

黒鬼王・無限を倒し、鬼ヶ島は静かに沈んでいった。

残骸の中、村で乗ってきた古びた船が、波間に奇跡的に残っていた。

「この船、まだ浮かぶんだな…」

「すごいぞ、俺たち!」

善逸が小さく拍手する。

伊之助は船の舵を持ち、「帰還だぁぁぁ!」と叫んでいる。

禰豆子は炭治郎の隣に腰掛け、目を閉じた。

「兄ちゃん、ありがとう。私、もう…夢に引き込まれない」

「うん、禰豆子。君は…もう鬼じゃないよ」

それは、炭治郎の実感だった。

血鬼術の痕跡も消え、禰豆子の肌は温かく、心も人としての穏やかさを取り戻していた。

兄妹は手を繋ぎ、波の音に耳を澄ませながら、眠りについた。


村への帰還

数日後――

港町「海笛」に戻った炭治郎たちは、村人たちから歓声と拍手で迎えられた。

「おかえりなさい、桃太郎さま!!」

「鬼が出なくなった!夜も安心して眠れる!」

「ありがとう、ありがとう!」

子どもたちは炭治郎に群がり、年寄りたちは善逸や伊之助にも花を渡した。

禰豆子には、町の女性たちから髪飾りが贈られた。

炭治郎は深く頭を下げた。

「僕たちは、ただ…守りたかっただけです」

その言葉に、村人の涙が止まらなかった。


そして――炭治郎たちは、老夫婦の暮らす山の村へ帰った。

桃の木が咲き誇る小さな山里。

あの日、川から流れてきた桃の中から生まれた少年が、再びここに戻ってきた。

老夫婦は家の前で待っていた。

「帰ってきたかえ、炭治郎…」

「おじいさん、おばあさん…ただいま」

炭治郎が膝をつくと、老夫婦はそっとその背に手を置いた。

「よう生きて…帰ってきてくれたのう…」

禰豆子も頭を下げた。

「私も、兄と一緒に…ここに帰ってきたかったんです」

善逸と伊之助も、少し照れながら立っていた。

「…家って、いいね」

「なんか…ここ、落ち着くなぁ」

老夫婦は笑いながら、囲炉裏を囲む食卓にみんなを招き入れた。

焼き魚、味噌汁、白いご飯、たっぷりのきび団子。

炭治郎たちは、涙を流しながら、**“命ある食事”**を噛みしめた。


それから

炭治郎は村に残り、炭焼きの仕事を再び始めた。

禰豆子は村の子どもたちに読み書きを教えるようになり、善逸はなぜか大工に弟子入りしていた。

伊之助はというと、山で動物たちと遊んで暮らしていた。

四人は、それぞれの“今”を、大切に生きていた。

だがある日、炭治郎は村外れの丘に立ち、桃の木を見つめながらつぶやいた。

「…僕は、もう一度だけ、旅に出ようと思う」

その言葉に、禰豆子は微笑んだ。

「わたしも、ついていくよ」

善逸も立ち上がる。

「はぁ…やっぱりそうなるんだね。でも、俺も行くよ」

伊之助は雄叫びを上げる。

「行くぞォォォ!!次はどこだァ!!」


旅立ちの朝

桃の花が咲き乱れる季節。

炭治郎たちは再び、村を旅立った。

今度は“鬼”を倒すためではない。

迷い、傷つき、孤独に沈む人々に、希望を届けるために。

炭治郎の背には、桃の紋の入った旗。

それは、“ただの伝説”では終わらなかった桃太郎が、
**“人のために立ち上がり、共に生きる者たちと進む”**という意志の象徴。

老夫婦は見送る背に、そっと手を合わせた。

「ありがとう、炭治郎。お前さんは、きっとこの世の宝じゃ」

炭治郎は、振り返らなかった。

でも、心の中でしっかりと返事をした。

「僕は――桃から生まれた剣士。
誰かを守るために、今日も歩き続ける」

風が吹いた。

桃の花びらが空へ舞い上がり、
まるで新しい旅路を祝福するかのように――。


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